福井県の新聞に出てました。

野良猫を地域猫に 保護活動が絆再生になる

(2011年12月11日午前9時16分)

 福島第1原発事故の警戒区域では、取り残された犬や猫などのペット救出が始まった。やせこけた動物たちの姿が痛ましい。ただ動物ゆえの不適切な扱いは被災地に限ったわけではない。県内でも捨て犬・猫が日々殺処分され、特に猫は県内で年間1千匹以上に上っている。排せつ物や鳴き声など野良猫をめぐる住民同士の軋轢(あつれき)もしばしば耳にする。

 小さな命と共生していく方法はないのか。NPO法人「福井犬・猫を救う会」(藤永隆一代表)が先月開催した野良猫対策の講演会では、住民ぐるみで避妊手術や排せつ物処理を行い、「地域猫」として保護活動を繰り広げている先進事例が紹介された。地域の絆の再生にもつながる取り組みだ。野良猫を地域猫に-とするこの活動に期待を込めたい。

 ■県内の殺処分猫、年1千匹超■

 同救う会によると、県内で殺処分された猫の数は、2007年度が1136、08年度1032、09年度1047、10年度1127と1千匹以上で高止まりしている。犬は07年度の340から10年度の191と減少傾向にある。飼い猫は避妊・去勢手術が進みつつあるようだが、それでも施術されずに子猫が生まれ、捨てられるケースが後を絶たない。

 捨てられた子猫は、殺処分されるまでもなく、カラスや交通事故などで絶命しているとされ、その数は殺処分数を上回るともみられる。成獣で捨てられた猫や、子猫から運よく育った猫が今度は繁殖する側に回る。猫は1年間に3度出産し、1度につき多くて6匹。年間18匹、3年間では50匹余と繁殖力は旺盛だ。

 こうして生まれた子猫が殺処分や事故死などに遭うという負の連鎖。その陰には飼い猫にはしないが、餌だけを与え続ける人がいるという。複数の野良猫が居付いたところでは、排せつ物や交尾期などの鳴き声、爪研ぎといった被害をめぐり、餌をやる人と住民の間でトラブルになるケースが絶えない。
 ■行政が「つなぎ役」担う■

 先進事例を発表したのは東京・新宿区職員の高木優治さん。大都会の真ん中で猫、といぶかる向きもあろうが、高木さんによれば、猫だけでなくタヌキやヘビといったペットが捨てられるなどして多数繁殖。猫の場合は家庭ごみなど餌に事欠かず、さらに陰で餌やりをする人も複数いるケースがほとんどという。

 保健所などに苦情が寄せられた場合、まずは迷惑を受けている人、自治会や町内会の役員らと接触。猫が出没する場所などを特定する。その際、情報を得るために「餌をやる人に協力を求めることが重要」とする。猫は縄張り意識が強く、餌やりを禁止しても移動しないため、餌をやっての情報集めが欠かせない。

 行政がつなぎ役になり、地区役員、餌やりの人、周辺の住民が話し合いの上で連携。排せつ物の収集、捕獲して避妊・去勢手術、地域猫としての管理、猫マップづくりなどへ発展させていくとしている。約1300世帯が住むある地区では年間約100匹の手術を実施。町内の集まりに顔を出す人も増えるなど、住民同士のコミュニケーションが深まる効果もあったという。

 ■協働は「住民自治の原点」■

 新宿区の活動が、本県でも取り入れられるかどうか。まず福井犬・猫を救う会が開催したように、先進事例を知ってもらう機会を持つべきだ。なぜ、住民が手術費用まで工面して飼い続けなければならないのか、保護活動を知って猫を捨てにくる人が続出するのではないか、いつまで活動が続くのか-など、疑問がつきまとう中、地域猫活動への理解を十分深めてもらうことが肝要だ。

 そのためには県や市町といった行政の後押しも不可欠だ。新宿区のように住民をつなぐ役割、手術費用の助成なども求めたい。モデル地区の認定なども考えたい。獣医師の理解や支援も大きな要素になる。

 地域猫活動は住民、ボランティア、行政の協働で成り立ち「住民自治の原点」(高木さん)でもある。他の課題解決への範ともなりうる。たかが野良猫と見る人も少なくないが、されど地域猫とされる活動の広がりに期待したい。(近藤 修)

     

   

   

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